目からウロコの The 美肌道

第8話 お肌の衰えを直視すればテンション下げ下げ↓

 

いよいよ角質ケアが始まったのに…

 

 20057月。ついに念願であった角質ケアサロン通いが始まりました。

サロンではにこやかに迎えてくださるものの、黙々とケアをし、多くは語らず終了という日々が続きました。帰りがけに次はいつ頃来れば良いのかと相談すると「しばらくは1週間置きくらいがいいですよ」とだけ。それ以外は何も言ってくれませんでした。

 

ため息で始まる朝

 

 このサロン通いを始める直前の肌状態は、と言いますと。

 毎朝、鏡の中の自分を見ると、なんとなく肌色がくすんでいました。洗顔は毎日しているわけですから汚れているはずはないし…年をとると肌色がくすむのかしら…はぁ~、と、まずは最初のため息が知らず知らずに漏れます。

 でも、気のせいかも! 光の加減かも! などと思い直してメイクを始めます。誰かの結婚式にでも呼ばれない限りデイリーメイクのベースはパウダリーファンデーションのみ。以前、下地クリームやコントロールカラー、リキッドファンデーションなど様々に試し、そうした肌づくりをしていた期間もありましたが、重たい感じの質感に馴染まず、なにより時間が経つとかえって小じわが目立ったり、肌色がくすむので使うのを控えていたのです。

 

ファンデを塗れば塗るほどドツボにはまる

 

 というわけでいきなりパウダリーファンデーションを顔の上に伸ばしていくのですが、この数年でいつの間にかできてしまった右瞼の目頭をきゅっと小さく摘んだようなドレープ状のヨレが気になって仕方ありません。

 このヨレという現象を実際に目撃したのは、盛り場で50年以上働いていらっしゃるというかなりご年配で厚化粧の女性にお会いしたときのみ。その方の瞼にできていたドレープ状のヨレとそっくりなヨレがかなり年下のはずの私にも…。

 あの方は70代くらいで、しかも厚化粧のキャリアも相当なものという感じでしたが、私は42歳にしてそこに仲間入りしてしまっていたのです。

 メイクをしようと鏡に向かうたびに、ヨレを隠したいという心理が働いて、ついついファンデーションを余分につけてしまう。ふと気づけばお粉が厚く盛られてかえって悲しい感じが増す自分にご対面ということを鏡の中で繰り返していました。

 こんな形で加齢現象の波が押し寄せているのだと思うと「なんでじゃー!?」と叫びたいくらい。しかし、叫ぶわけにもゆきませんので、はぁ~と二つ目のため息です。

 

隠したい真理が厚化粧を呼ぶ

 

 そして、本当に皮脂、汗が極端に少ない自分には無縁だと思っていた毛穴の開きが鼻の両脇にじわじわと広がり始めていることにも気づき、これまたついついファンデーションでカバーしようと厚塗りに。

 開いた毛穴は一生見ない予定だったのに…はぁ~と三つ目のため息です。

 メイクが仕上がって鏡を見るとまたがっかり。以前のまだ若々しかった頃のメイク顔のイメージがしっかりと頭の中に残っていて、その顔への帰省本能が無意識に働くのか、あれ? アイシャドウが足りなかったかしら? チークが足りない? アイラインが甘い? となんとか帰ろうとしては厚化粧になっていくばかり。

 全体になんとなくたるんだような、微妙に緩んだ衰え顔にはぁ~と四つ目のため息。

 子供の頃から気にしていたクマはもとより、いつの間にか両方の目頭の脇に眼鏡が当たる部分に黒いくすみの塊ができてしまい、日に日に濃くなってきているような…。

 仕上げの五つ目のはぁ~で終了です。

 

深夜の自分と真正面から向き合う!

 

 こうして滅茶苦茶テンションが下がる朝を迎え、げんなり気分で一日がスタートするのでした。はぁ~。

 しかし、朝はまだマシだったのです。

 雑誌編集の仕事をしていると残業が深夜に及ぶことなど日常茶飯事なのですが、ある時、深夜2時くらいに会社のお化粧室で鏡に映る自分を見て驚愕しました。

 疲れきって落ち窪んだ瞼、目のまわりに暗い影を落とすくすみの塊。すごい…。一瞬直視できませんでした。しかし、怖さをこらえてじっくり観察してみることにしたのです。

 この時自分の衰え顔を見ていたら、楳図かずおさんがどのようにして恐怖漫画の恐ろしい顔を描いているのか、手に取るようにわかりました。発見です。肌に落ちる陰惨な影やシワ、こけた頬は人に老いを感じさせ、その影の絶妙な配置は最終的に死を予感させるのです。

 ひー!!! 「衰え」→「老い」→「死の予感」→「恐れ」→「恐怖漫画」

 顔の特定な箇所に影が入るとたちまちこの印象を放ち始めるのです。こんなことを一瞬にして掴んでしまう程に、当時の私の肌はキテいたのです。

 もちろん、絶望しましたさ。でも、目を背けて気づかないふりをして、心の準備がないままにそんな現実を見てはショックを受けるということを繰り返すよりは、一度しっかり真実を見据えておいたほうがましです。それからは深夜の鏡をちらちらと見ては、寂しく笑うことができるくらいにはなっていました。

 この嘆かわしくて恐ろしい現実が、角質ケアサロンへ毎週通うごとに、実は加齢現象ではなかったと言わんばかりに急速に改善されていったのです! まだ自宅でのセルフケアの必要性にも気づかず、ただ週に一回ケアしていただけだったというのに。